2月に那覇市の完全予約制の『傳饗』にて、沖縄からの参加者と交流をはかりながら、
講座つき薬膳イタリアン・ディナーを開催いたしました。
上江田崇オーナーシェフは、沖縄の歴史と特色のある沖縄の食文化を広く伝えたいと、
那覇市のTrattoria Lampほか2店舗をあえて閉め、『傳饗』にてフードデザインやホテルの食のプロデュースもされています。
沖縄は450年にもわたる琉球王朝時代、王が即位するたびに中国からの400人単位の使節を半年にもわたって受け入れ、大小の宴会でもてなしました。
料理人は中国に渡って料理技術を学び、北京に留学した侍医頭は、
食材の性質と効能を『御膳(ぎょぜん)本草』という書物に著したため、日本で薬膳の知識が最もストレートに伝わっている県だと思います。
まずは、泡盛の酒粕を使ったもろみ酢に、地元の薬草「苦菜(にがな)」と、蜂のビーポーレン(足についた花粉)、蜂蜜を使ったドリンクでスタート。
前日に見学した、輝くような肌の在来種の「今帰仁アグー」の自家製ハム。
カビやすい気候なので、塩をして数日おいたあと、燻製に。
脂肪融点が低いので、噛むうちに脂が口のなかで溶けるよう。
次は、沖縄で昔から体力が落ちたとき、とくに冬から春にかけて飲む豚レバーのスープ、「シンジムン」。この名前は、薬膳に欠かせない料理技術、「煎じたもの」という意味から来ています。
イカ墨のジューシーは、沖縄でも血を補い、婦人科系疾患の治療補助に使われたという白烏賊とその墨を使って。
動物性脂肪のラードで炒めて作るところが、リゾットに似ています。スーチカーと呼ばれる塩漬け豚バラ肉も使い、ドライトマトを味の変化として添えて足す。
トッピングは、一株食べれば一日寿命が延びるという長命草のフリット。
沖縄の高級魚、赤マチはアクアパッツァのようにマース(塩)煮に。
水に漬けて余計な甘さを抜いたクコの実が、アクセントに入ります。
経産牛のあやはし牛は、藁焼きに。添えたのは、沖縄でも今では珍しく、生産者も食べ方を知らないという自然薯「クーガ芋」に紅麹を加えたピュレ。
ドルチェは真っ赤な苺を、島豆腐とマスカルポーネを合わせたクリームで。
茶葉は体を冷やす性質を持ちますが、発酵させると体を温めてしまうので、
上江田シェフはわざわざ金川製茶さんと相談して、弱発酵の紅茶を選んでくださいました。
沖縄からの参加者も交えて、サプライズもあり、シェフとSALUTEで共に創り上げた、
忘れられない時間となりました。
急に暑くなった気候に合わせて、最後まで食材変更を加えてくださいました上江田シェフ、
本当にありがとうございました。